突然ですが皆さんはカラスやムクドリが地面で毛づくろいをしているのをご覧になったことはありませんか?
あれはただ単に毛づくろいを行っているわけではなく、よく見ると地面を歩いている蟻を体に擦(こす)りつけています。
一見全く意味が分からない行動ですがなぜそんなことをするのでしょうか?
今回は鳥が体に蟻を擦りつける蟻浴(ぎよく)について詳しく解説させていただきたいと思います。
早速見ていただきましょう。
目次
蟻浴とは?
蟻浴とはカラスやムクドリなどの鳥(以下鳥)が自身の体に蟻を擦りつける行為のことを指します。
全ての蟻が該当するわけではありませんが一部の蟻(カタアリとヤマアリ)はギ酸(蟻酸)という物質を持っています。
ほとんどの蟻は毒を持っていますが、カタアリとヤマアリにはありません。
もしかすると毒の代わりにギ酸が生成されたのかもしれませんね。
ギ酸とは強い匂いを放つ透明の液体のことで、蟻のお尻から放出されます。
鳥が蟻浴を行う理由はギ酸を求めているからです。
参考 蟻浴 コトバンク
蟻浴を行う目的とは?
鳥が蟻浴を行う目的はギ酸に防虫や殺虫、殺菌効果などが含まれているからです。
蟻がギ酸を放出するのは外敵から巣や身を守るためです。
また、ギ酸は酢酸などよりも酸性が強く有害であり、酢酸を生成するとギ酸も同時に生成されます。
ちなみにギ酸は酸性が強いため、人体への影響も少なくありません。
例えば皮膚に付いてしまうと水膨れが発生し、目に付いてしまうと失明してしまう恐れもあります。
↑実際に蟻浴を行っているカラスの動画です。
よく見ると歩いている蟻をくわえて自分の羽に擦りつけていることが分かりますね。
蟻浴が無害な理由とは?
ギ酸は酸性が非常に強い物質ですがなぜ鳥には無害なのでしょうか?
ましてや自分からそれを体に付けているのを見ると一見自滅行為にも見えます。
ではなぜ無害なのかというとギ酸を体に直接付けていないためです。
鳥は蟻浴を行う際に羽の中に潜んでいる寄生虫や小さな虫にギ酸を付けています。
蟻浴を行う目的は羽の中に潜む寄生虫や小さな虫をギ酸で駆除しつつ、羽に防虫効果や殺菌効果を付与させることです。
蟻浴をされた蟻の行方とは?
蟻浴をされた蟻はその後どうなるのでしょうか?
鳥は蟻浴を終えると蟻を開放する場合がほとんどですが、お腹が空いている時は食べてしまうこともあります。
ギ酸がまだ残っているかもしれないのに食べたりなんかして大丈夫なのか心配になりますが問題はありません。
鳥が蟻を食べる時はギ酸が放出されなくなったことを必ず確認します。
そのため体に異常をきたすこともありません。
蟻浴を発見した人物とは?
蟻浴はドイツのエルヴィン・シュトレーゼマンという鳥類学者が発見したと言われており、1935年にOrnithologische Monatsberichte XLIII. 138という月報の中で初めて紹介されました。
発表されたのが1935年なので発見したのはもう少し前のことになるかもしれません(調べても出てきませんでした・・・すみません)。
まとめ
蟻浴について解説させていただきました。
今回紹介させていただいた内容をまとめると次のようになります。
・蟻浴とは鳥が自身の体に蟻を擦りつける行為のこと
・蟻浴を行う目的はギ酸に防虫や殺虫、殺菌効果などが含まれているから
・ギ酸を体に直接付けていないため体に害はない
・蟻浴に使われた蟻は解放されることが多いが食べられてしまうこともある
・蟻浴はドイツのエルヴィン・シュトレーゼマンという鳥類学者が発見した
蟻浴を行うことによって防虫や殺虫、殺菌効果が得られるので鳥にとって蟻は生きる上で欠かせない存在となっています。
鳥を見かけた際には観察してみると面白いかもしれませんね。
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